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『ぼくと、きみと、ぼくたちのこども』

むかしむかし、バレンティーノ・ロッシという男がいました。
バレンティーノにはおつきあいしていた名家の恋人がいましたが、うまくいかなくなって別れてしまいました。
 
ある日の夜、バレンティーノはМ1という女性と出会いました。

いなかそだちのМ1は おせじにも美人とは言えませんでした。
着ているものはチグハグで、まるで統一感がありません。ブランド品で身をかためていた名家の恋人とは大きな差がありました。

しかし、バレンティーノは彼女にひとつのきぼうを見つけました。
そのきぼうはとても小さなものでしたが、彼は自分の直感をしんじ、M1に賭けることにしたのです。
 
「ぼくの手で、かならず彼女をすばらしい女性にしてみせる!」
 
バレンティーノは まいにちまいにち彼女に話しかけ、いっしょにいる時間をたいせつにしていました。

愛情をたくさんあたえられたM1は、デートを重ねるごとに、みるみる美しくなっていきました。
 
あるとき、南アフリカにあるウェルコムという場所で、バレンティーノは はじめて彼女にキスをしました。

キスをされたМ1は、まっすぐ彼を見て、こう言いました。
 
「I LOVE YOU」
 
それから ふたりで世界をまわり、たくさんの思い出とたのしい時間をふやしていきました。
時間をかさねるたびに、ふたりの愛はぐっと深まっていったのです。
 
そんなある日のこと。
ふとしたボタンの掛け違いから、ふたりのかんきょうが大きく変わってしまいました。
バレンティーノとM1は いっしょにすごすことがむずかしくなってしまったのです。

だいすきなM1とすごせない時間は バレンティーノから希望をうばっていきました。だいすきな彼女のいない ふたつの冬と、ふたつの春と、ふたつの夏と、ふたつの秋…
彼のかおからは笑顔が消えていってしまいました。
 
М1のいない毎日におわりを感じたバレンティーノは、勇気をだしてもう一度、彼女のところへもどる決心をしました。
 
いくつかのおおきな山をこえ、やっと再会できた彼女に、バレンティーノはこう言いました。
 
「さみしかったでしょ? ぼくもだよ」
 
そうして、たくさんハグをして、たくさんのキスをしました。
 
それからはデートの時も今まで以上に彼女によりそって、話しかけることが増えました。

今までよりも、ずっとずっと絆が深まっていったのです。
 
落ち葉が舞って、もうすぐ冬がやって来る頃、ふたりの間に子供ができました。

М1の美しさと、バレンティーノの遺伝子がそそがれた、かがやくような美しい女の子でした。

ふたりはその子に、名前をつけました。

バレンティーノ・ロッシの「R」と、
М1の「1」をとって、「
R1」・・・と。

バレンティーノとM1の顔に、たくさんの笑顔がもどりました。
R1を見つめるふたりの顔は、とてもしあわせに満ちていて、ずっとずっといっしょにいようと固くこころにちかったのでした。

めでたしめでたし。

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